中古の住み心地よさ
新居に引っ越してきて、約3か月。築30年とはいえ、那覇市を一望できる高台にあるマンション。無駄に広いベランダだが、腰を下ろし、ビール片手に見る夜景は格別な気持ちになる。
景色が見える窓際に仏壇をおいた。夫専用の「特等席」。生きていたらきっと気に入ってくれた

家は買わない、と夫婦で決めていた。
私は実家が抵当権とローン地獄でトラウマになっていたし、夫は自分の実家が周辺住民(親戚?)とのトラブルになったことがトラウマだったので、“持ち家”の響きにプラスのイメージがなかった
(毎週、配達される住宅新聞の素敵な家の記事に、憧れを感じたのも事実なのだが)
いざ、自分の家に住んでみると……借金の不安を上回る快適さがあるのを知った
念願の乾燥機も取り付けた。週末、洗濯機を数十回まわし、コインランドリーに4往復し1日がつぶれる「週末ルーティン」からも解放された
ガス料金の代わりに時間を手に入れた
引っ越しまでの長いプロセス
ふと天井を見上げると電灯が一つ足りない。ネット注文し忘れた。ところどころ足りないものが目に付く。完成度90%、もうちょいだ
中古物件を購入したので、リフォームは業者に丸投げしようとしたら、思いのほか高額でビビってしまった
そこでリフォーム業友人に安くなるコツを徹底して聞いた。大がかりなリフォームは友人に頼み、内装は知り合いに分離して発注。電灯やトイレなどネットで注文。
ネット注文の三分の一は失敗したが、用は足りたのでヨシとした

沖縄の蒸し暑さに漆喰の壁が適しているとDIYが得意な友人が教えてくれた。友人家族は自前でリフォームしたので、私達もまねることにした
「息子たちにいい社会勉強だ」と、三部屋を自分たちで漆喰塗りの作業
DIYが得意なのがいるならまだしも、不得意の素人親子、しかも息子たちは高校入試に高校入学と人生の節目。私だって年度の変わり目で超忙しい
作業は遅々として進まず……
なんでこの時期に家を買って、なんで自分たちでリフォームすること考えたのか、だんだん、分からなくなってきていた。
多少お金がかかっても業者に任せたほうがよかった、と後悔しながらも、続けた
見かねたDIY家族が手伝い、何とかリフォームの形が整い、進まない引っ越し作業も手伝ってくれて、6月にようやく“住める空間”になっていた
銀行ローンのリュックをしょって
思い出がつまったアパートを前を通ると、3階の古巣に新しく入居した人はまだいないようだ
このアパートで子育てして、人間関係を築き、夫がガンになり、家族が家族になった。
見上げると、洗濯物を干している夫の姿がそこに重なる
洗濯好きな夫は、時間があるといつも何かを干していた。私は、仕事から帰ると、まず3階ベランダを見上げ、干した物をみて、その日の夫の体調を知ることができた
夫は、洗濯ものを取り込み、ベランダ越しに小学校グランドでの少年野球の練習風景を眺めたり、夕日をみていた。穏やかな顔で、飽きることなくずっと眺めていた

詰まり過ぎた思い出にぐっと胸が締め付けられる。3回忌まで引っ越しは控えたらと言われもしたが、やっぱり、思い出の重さにつぶされる前に引っ越して良かった。
銀行ローンのほうが、まだ軽い。私にしょえる重さだ

天国の愛する旦那様、私達3人は新居での生活をスタートしたよ。傍にいると思うけど、ひとまず報告します