第20話 “首里たつのこ”が家族の根っこ

首里に暮らして

保育園中心の地域に暮らす

 彼が亡くなり、通夜、告別式、初七日、四十九日…と法事が続き、その間、家に切れ目なく人が出入りした

 誰が来てもいいように、ビールと泡盛は常備していたので、近所の親しい人は一杯飲みながら思い出話をしに立ち寄った。

 義弟は,、いつも誰かが家にいるし、その人達のバックグランドが多様だと言い、「まるで、昔ながらの長屋みたいですね」と驚いた。

 夫は、住んでいるアパートとこの環境を気に入っていた。

 私達はともに仕事のキャリアを積んでいたし、頑張って、中古住宅を購入してみない、と相談したことはあった。が、夫に即答で却下された

 「このアパート以上のところがあるわけないだろ」

 3LDK駐車場付き共益費込み67,000円の家賃。目の前に小学校。4分歩けば中学校。息子たちの通学にはパーフェクト。


 徒歩7分にモノレール駅もできた。立地条件は文句なし。これだけではない。ここで築いた人間関係が極上だった。

 

 このアパートは、直感でみつけた

 出産し育児休業の1年が終わる頃、当時住んでいた場所の周辺にある保育園を何件も見学。なかなかピンとくる園がなかった。

 そんな時「認可外だけど、のびのび育てるいい園」があると知人から聞いた

 見学に行くと、園長から「私たちの園は、地域の子どもを地域で育てるので、地区外からはとらないんです」と帰された。

 その時、夫は断言した「この保育園にしよう、絶対ここ。保育士の表情みてごらん。みんなイキイキして楽しそうじゃないか。きっといい園だよ」

 園庭をみると、でんとかまえたガジュマルに子ども達が登っている。

 その後、何度か見学し「近くに引っ越す」約束で入園し、その後6年間通った。
  
 結局、引っ越したの小学校の学区が決まる直前だったが、保育園の半径2km以内のアパートを数十件回って、さがしあてた物件だった。

 

第48話も読んで下さいね

糸が絡まったりほどけたりの関係

 当然、人間関係は保育園を中心に作られた。

 出産するまでは、ママ友と付き合うイメージは”面倒”そのものだった

 「お宅のお子様は~ざぁます」みたいな見栄の張り合いとか、ドラマでみる公園デビューのようなやっかいなものだと思っていた。

 予想に反して、気の合う人が多かった。6年間で心理的距離が縮まり、小学校入学後は家族ぐるみでキャンプや旅行、週末飲み会で親しくなった。
 

 居酒屋で飲み、我が家でも飲み会を開催し、ついでに子ども達をまとめて泊まりで預かった。
 


 私は育った実家が大家族で人の出入りが多い環境で育った。大家族なりにゴタゴタしたが、家に他人がいる環境が嫌いではなかった。

 夫は4人家族で静かに育ち、他人の出入りが苦手だったので、子供達を泊めた時、居間に敷布を広げてずらっと並んで寝る姿に面食らっていた。が、すぐ、なれた。
 
 夫の交友関係は、記者仲間から近所が中心となり、家事から解き放たれる週末の飲み会を満喫した。

 親しくなった近所友人は、ガン手術の時も駆けつけ、快気祝いも開いてくれた。夫のブラックジョークにはブラックで返す仲になっていた。

 夫の通夜、告別式にはアパートを中心にした人が多く訪れた。

 身内と同じで、付き合いが密になればなるほど、誤解も小さな衝突も起こるし、それで落ち込むこともあった。

 でも人が交わるとき、糸は絡まったりほどけたりの繰り返しなんだと分かった。

 息子が「大人が、あんなに泣く姿をはじめてみた」と驚くほど、肩を震わせて泣く飲み友達のお父さん
 祭壇の横にある献花は、保育園や保護者仲間、地域の人からの供えもの

 
 絡まった糸は、ほどける。私たち家族が根を張っている地域の繋がりを感じた


  あの日、保育園を直感で決めた夫  「俺の勘はあたるんだよ。信じて良かっただろ」と得意げに笑っている姿が浮かぶ。

第48話に園長先生の旦那さんの話あるよ