糸満のハーレー
旧暦5月4日はユッカヌヒー、沖縄各地の漁業の町では豊業を祈ってハーリー行事がある。豊漁と航海の安全を願う町の一大イベント。
サバニ(小さな漁船)に複数人が乗り込み、チームで海上ゴールを競う。
漁業の町糸満では、ハーリーではなくハーレー(バイクのハーレーダビッドソンではない)
ハーリー行事をゴールデンウィークに合わせる地域もあるが、糸満はそんなことしない。漁師は全て旧暦カウント
旧暦5月4日が平日であれば、地元小中学校は休みになる。
レース場となる糸満漁港の周囲には、応援するおばぁのカチャーシーや指笛が鳴り響き、町挙げてのお祭り騒ぎ。
いつも飲んだくれているオジサン、不良で学校に来ない同級生も、この日ばかりは勇壮な漕ぎ手となる。
見所はランチタイムに行われるアヒル採り競争。何十羽のアヒルを海に放ち、観客が海に飛び込みアヒルを捕まえる。
家族みんなで観戦party
20代半ばから実家をでた私は、糸満ハーレーを長いこと観戦していなかった。
夫はガンをきっかけに主夫になった途端「平日に開催される糸満ハーレーが観戦できる」と大喜び。
ツインズも小学校を休ませて家族で観戦。なんてたって「母(私)は糸満漁民の血が流れている」ことを感じてもらう大事な日ですから。
観戦場所は漁港目の前にあるアパート5階屋上。そこは、お酒を飲みながらサバニで競うチーム全体が見える特等席。
近くにはあの50代ガールズバー。だからバー関係者の家族と親戚が一同に集まり、ごちそうが並べられる。
バー常連の釣りたてマグロが毎年差し入れ、特上のつまみにして勇壮な競技を楽しむ。
夫は、このビル屋上のハーレー観戦に参加して以来、魅力にとりつかれた。
息子はアヒル採り競争に参加 ようと漁港に駆け寄る。かつて女性は参加できなかったが、今では誰でも飛び込める。
野球部息子は飛び込みアヒルを捕まえようと果敢に挑戦。もう一人は飛び込みなしで近くではしゃいでいる。
スイミング教室に通わせなかったのに、いつの間にこんなに泳げるようになったのだろうか。
子どもの成長みつつ、地域の芸能と“地元感覚”が織りなす人間模様。
糸満方言が飛び交いながら過ごす風景を、夫は「映画よりも面白い」と心底、楽しんだ。
今年のユッカヌヒーは6月20日。ガールズバーの親友にユッカヌヒーと気づかずにメッセージを送ったらかなり時間が経ってから返信が。
「今日はハーレーでバタバタ。酔っ払ってるから明日ね」と。
そして「今年もたくさん来たよ。私の旦那は朝9時にビール、昼には、みんな飲んでたよ。来年は来てよ」のメッセージも追加。
屋上からの糸満ハーレーLIVE。夫が生きていた時のあの時間が目の前に広がる。
生まれ育った場所ですら夫の思い出で占拠。
来年のハーレーは行けたらいいな。思い出に潰されずに、行けたらいいなぁ