ウチナータイムの私
コロナ禍が少し落ち着いたので、研修旅行と称し、久しぶりに遠出を決行し宮古島へ行くことになった。
友人から、那覇空港での待ち合わせは、出発時刻の2時間前が指定された。
「県内の離島に行くのに2時間前の待ち合わせ? えっ、早すぎるよ」とぼやいた。
友人はきっばり「2時間前に約束したら、あなたは1時間前には到着するでしよ。だから、その時間でいい」と。
まっ、認めたくはないが、私は典型的な”うちなータイム”と言われている。……しかたないと、納得するしかなかった

夫が空港に託した夢
旅行へ出発する時の空港は最高だ。
旅の展開を予想しながら飲むビールの旨さはこのうえない。ウキウキした気分が空港ラウンジで一気に上昇気流。
……のはずなのだが、私はいつも空港到着がギリギリだったので、夫は旅行のたびにイラついた。家の玄関でずっと私を待っていた。
「やることがたくさんあるの。子ども連れならその支度、夫婦だけなら子ども達の学校や食事の用意、預け先へのお願いごと、仕事も片づけなきゃいけない」
「あなたとは違うんだから」と逆ギレするのかお決まりのコースだった

夫はやがてイラついくのをやめ、空に願いをかける作戦にでた。
「俺の夢は…余裕持って空港に到着すること。離陸する飛行機を眺めながら…ゆっくりビールを飲みたい」「生きているうちに一度でいいから…」と言うようになった。
友人たちは夫に「じゃ、まだ死ねないね」とか、「旦那様が死ねないように、わざと空港にギリギリにしているんだよ」とかばっているのかいないのか、よく分からない言葉をかけてくれた。
空港に早く到着しても涙
時間ギリギリ到着は、夫になら逆ギレできたが、他人である友人達にはそうはいかない。相手は一気に責めてくる。
だから、その日、頑張って1時間前に空港に到着
常に上から目線の友人は「やればできるじゃん」と褒めてくれた。
早く到着したといっても、友人たちのなかで一番遅かったので、罰ゲームとして私は宮古島でのドライバーに割り当てられた。
”空港でのビール”という極上を味わうことなく、友人らの飲む姿を横目でみていた。
夫と一緒のシーンがよぎる。那覇空港に余裕持って到着したことなかったから、那覇空港ラウンジでゆっくりすることなど、ほぼなかった。
「今なら少し余裕持って到着できてるよ、今なら出発前にラウンジで1~2杯飲めるよ、それが夢だって言っていたでしょ、叶う前に死ぬのはずるくない」と、悔しくなり涙が流れてきた。

「あ~、ビールは飲めない。夫もいなくなった。あ~悔しい」と泣いている私を、友人たちは「はいはい、また始まった」と笑い飛ばした。
夫がぼやいていた私の欠点は改善されつつある。
できるなら、生きているうちに改善してあげたかった。けど、仕方ないから、ウチナータイムからの脱却を目指して頑張るしかない。